薬の相互作用
複数の薬剤を併用したときに、薬の組み合わせによっては、体内で必要以上に効果を強めたり、反対にそれぞれの効果を打ち消してしまったりすることがあります。あるいは全く思いもよらない副作用が出て、ときには大変な危険が生じたりします。これを薬の相互作用といいます。最近、ソリプジン(帯状ほうしんの薬)とフルオロウラシル系薬剤(抗がん剤)の併用で死亡例が出たことが、新聞で大きく取り上げられましたが、これも相互作用の一例です。その他にも、アスピリン(鎮痛剤)と経口の糖尿病薬を一緒に飲むと、糖尿病薬の作用が強まり、低血糖になるおそれがあります。また、ニューキノロンという抗菌剤とある種の消炎剤を一緒に飲むと、けいれんが起こるなど、多くの相互作用が解かってきました。特に、高齢者では相互作用による副作用の発現頻度が高く、しかも重篤なものが多いとされています。薬は原則として一種類だけを服用することが望ましいのですが、種々の病気を治療するためには、どうしても二種類以上の薬を飲む「薬の飲み合わせ」が必要となります。
現在は薬が認可されるときに、相互作用、副作用を十分調査し、「使用上の注意」として医師、薬剤師に知らされています。ですから一人の医師から多くの薬をもらっても、それは副作用や悪い相互作用を起こさないように処方してくれていますから心配ありません。しかし同時に二つ以上の診療科や病院にかかり、数種類の薬を飲む場合は注意が必要です。薬の飲み合わせによっては思わぬ相互作用、副作用が生じることもあります。
例えば、皮膚科の飲み薬(痒みとめの薬)と内科の胃薬は、一見お互いに無関係のようですが、飲み薬である以上、薬は体の中にめぐり様々に作用するわけですから、相互作用の可能性はあります。そこで、複数の診療科、病院を受診されるときは、あらかじめ医師に自分の飲んでいる薬について伝えることが必要です。また薬局で薬を買う場合も同様に、自分の現在飲んでいる薬を薬剤師に伝え、薬剤師の注意をよく聞いてください。そして、薬を服用する際には、「指示書」「使用上の注意」をよく読んでから使うことが大切です。ただ、すべての薬に相互作用が生じるわけではなく、また相互作用の起こり方にも個人差があり、誰にでも絶対起こるというものでもありません。しかし、複数の薬剤を服用する場合は、相互作用の起こる可能性があることを忘れないで下さい。そして、素人の判断で勝手に二種類以上の薬を混ぜて飲むのは絶対に避けてください。薬の相互作用を避けるためには、自分自身がある程度の薬に対する知識をもつこと、自分が使用している薬の状況などを医師や薬剤師によく相談することが大切です。